イベントに出店して売上が立つと、次に出てくるのがこの疑問です。「これ、確定申告っているの?」
年に1回だけフリマに出た人と、毎週キッチンカーを出している人とでは、答えが違います。この記事では、自分がどちらに当たるのかを整理したうえで、開業届・経費・インボイスまでを、出店者の目線でまとめます。
まず、自分がどれに当たるか
判断の基準は売上ではなく「所得」です。所得 = 売上 − 経費。出店料も材料費も容器代も引いたあとの、手元に残った金額で考えます。売上30万円でも、経費が28万円なら所得は2万円です。
会社員・パートなど、給与をもらっている人
給与以外の所得が年間20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要になるのが一般的です。
ただし注意点があります。20万円以下でも、住民税の申告は必要とされています。所得税の申告が不要なだけで、何もしなくていいわけではありません。お住まいの市区町村に確認してください。
給与をもらっていない人(専業・主婦・学生など)
所得が基礎控除などの合計を超えると、確定申告が必要になります。金額の目安は年によって変わるので、その年の国税庁の案内を確認してください。
年に1〜2回だけ、不用品を売った人
自分が使っていた物を売っただけなら、生活用動産の譲渡として課税されないのが一般的です。ただし、転売するつもりで仕入れた物を売っている場合は話が別です。
フリーマーケット出店については、フリマ出店の始め方の記事にまとめてあります。
開業届と青色申告
継続して出店するなら、早い段階で考えておいたほうがいい2つの届出です。
開業届
正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。事業を始めた日から1か月以内に、所轄の税務署へ出すこととされています。出さなくても罰則はないとされていますが、青色申告を使うには、実質的にこれが前提になります。
用紙は税務署でもらうか、国税庁のサイトからダウンロードできます。何を書けばいいか分からない場合は、質問に答えるだけで書類を作れる無料のサービスもあります。
弥生のかんたん開業届
PR画面の質問に答えていく形で、開業届と青色申告承認申請書を作成できる無料のサービスです。会員登録が必要ですが、書類の作成自体に費用はかかりません。
- ✓開業届と青色申告承認申請書を、まとめて作成できる
- ✓スマートフォンからでも作成できる
注意:書類を作るところまでのサービスです。提出は自分で行います。用紙は税務署でもらうか、国税庁のサイトからダウンロードして手書きすることもできます。どちらでも構いません。
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青色申告承認申請書
こちらは期限が厳しいので注意してください。
- 原則:適用を受けたい年の3月15日まで
- その年の1月16日以降に開業した場合:開業日から2か月以内
この期限を過ぎると、その年は青色申告が使えません。開業届と同時に出しておくのが確実です。
青色申告で受けられる控除(2026年9月時点)
主な要件
- 65万円
- 複式簿記+期限内申告に加えて、e-Taxでの申告または優良な電子帳簿の保存
- 55万円
- 複式簿記+期限内申告(書面で申告した場合)
- 10万円
- 簡易な帳簿による記帳
| 比較項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記+期限内申告に加えて、e-Taxでの申告または優良な電子帳簿の保存 |
| 55万円 | 複式簿記+期限内申告(書面で申告した場合) |
| 10万円 | 簡易な帳簿による記帳 |
2026年9月時点。要件の詳細は国税庁の案内で確認してください。
2027年分から仕組みが変わります
令和8年度の税制改正で、青色申告特別控除の仕組みが変わることが決まっています。改正法は2026年3月に成立しており、所得税については2027年分(令和9年分)から適用されるとされています。主な変更点は次のとおりです。
- 75万円の控除が新設されます。現在の65万円の要件に加えて、「優良な電子帳簿の保存」または「請求書データ等との自動連携」のいずれかを満たす必要があるとされています
- 55万円という区分がなくなります。e-Taxでの申告を要件に加えたうえで、65万円に統合されるとされています
- 紙で申告した場合は、控除額が大きく下がります。複式簿記でつけていても10万円になるとされています
つまり、これから青色申告を始めるなら、最初からe-Taxで申告する前提で準備しておくほうが安全です。
準備は2026年のうちに
ひとつ注意点があります。「優良な電子帳簿」は、その年の最初から要件を満たして運用している必要があるとされています。年の途中から切り替えても、その年は間に合いません。2027年分から75万円の控除を受けたいなら、2026年のうちに帳簿の付け方を決めておく必要があります。
イベント出店で経費になるもの
ここがこの記事でいちばん実用的な部分です。事業に必要な支出であることが説明できるものが対象になります。
出店に直接かかるもの
- 出店料・出店負担金
- 材料費・仕入代
- 容器・包材・割り箸・紙ナプキン
- ガス・燃料・氷
- 使い捨て手袋・アルコール・消毒用品
容器・包材にいくらかかるかは、容器・包材の記事でまとめています。
移動にかかるもの
- ガソリン代・高速代・駐車場代
自家用車を私用と兼ねている場合は、事業で使った分だけを按分して計上するのが一般的です。「月に何日、事業で使ったか」など、説明できる基準を決めておいてください。
機材・什器
金額によって扱いが変わります。
- 1つ10万円未満:その年の経費(消耗品費など)にできるのが一般的
- 1つ10万円以上:原則として減価償却の対象になります
ただし青色申告なら、30万円未満のものをその年の経費にできる特例が用意されています(上限あり・適用期限あり)。テント、冷凍ストッカー、決済端末などが該当しやすい部分です。使えるかどうかは、その年の要件を確認してください。
販促・看板
- 横断幕・のぼり・POPの印刷代
- ショップカード・チラシ
看板類をどこで作るかは、横断幕・のぼり・看板の記事を参考にしてください。
決済まわり
- キャッシュレス決済の手数料
- 決済端末の購入代
決済手数料は、売上から自動で差し引かれるため見落としがちです。入金額ではなく売上金額と手数料を分けて記録してください。
端末の選び方は、決済端末の比較記事にまとめています。
その他
- 営業許可の申請手数料
- 賠償責任保険の保険料
- 通信費(事業で使った分)
営業許可の手続きは、許可・申請の記事で解説しています。
レシートが出ないものはどうするか
コインパーキング、電車代、募金箱形式の出店料など、領収書が出ない支出はどうしても発生します。その場合は、日付・金額・支払先・内容をメモに残しておきます。出金伝票を使う方法もあります。「記録がないから諦める」より、記録を残しておくほうが確実です。
レシートは、出店した日ごとに封筒に入れておくだけでも後がまったく違います。1年分をまとめて仕分けようとすると、必ず挫折します。
インボイス、登録は必要か
不安になっている人が多い話ですが、屋台・マルシェ出店の多くは、登録が必要ありません。
なぜ必要ないことが多いのか
インボイスが必要になるのは、買った側が「仕入税額控除」をするときです。イベントで焼きそばを買っていくのは一般のお客様です。その人たちは仕入税額控除をしません。だから、レシートにインボイスの番号がなくても困らないのです。
登録を考えたほうがいい場合
次のようなときは、求められることがあります。
- 企業のイベントに呼ばれて、主催者に請求書を出す
- 会社の社内販売やケータリングを請け負う
- 取引先が法人で、インボイスを求めてくる
登録すると何が変わるか
いま消費税を納めていない事業者でも、登録すると納税義務が生じます。売上1,000万円以下だから免除されていた人も、登録した時点で対象になります。「とりあえず登録しておこう」で登録するものではありません。
2割特例は、2026年分が最後です(重要)
インボイス登録した小規模事業者の負担を軽くする「2割特例」という措置があります。納める消費税を、売上にかかる消費税の2割にできる仕組みです。
この特例の対象期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までとされており、個人事業者の場合、適用できるのは令和8年分(2026年分)が最後です(国税庁)。
いま登録を検討している人にとっては、登録するタイミングによって負担が変わるということです。この判断は個別性が高いので、税務署か税理士に相談してください。
帳簿はどうやってつけるか
青色申告の65万円控除を使うには複式簿記が必要です。簿記の知識がないと、手作業ではまず続きません。現実的な選択肢は3つです。
1. 会計ソフトを使う
銀行口座やクレジットカードと連携させると、取引が自動で取り込まれます。複式簿記の帳簿も、入力した内容から作られます。月々の費用はかかりますが、時間の節約とのトレードオフです。
やよいの青色申告 オンライン
PR個人事業主向けのクラウド会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードと連携させると、取引の記録が自動で取り込まれます。複式簿記の帳簿も、入力内容から作られます。
- ✓青色申告に必要な複式簿記の帳簿を作成できる
- ✓白色申告向けのプランもある
注意:料金プランと内容は変わることがあります。申し込む前に、公式サイトで最新の条件を確認してください。
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2. 表計算ソフトで記録して、税理士に渡す
記録だけ自分でして、申告は任せる方法です。売上が増えてきたらこちらのほうが結果的に安く済むこともあります。
3. 白色申告にする
青色申告の控除は受けられませんが、記帳の負担は軽くなります。年に数回の出店なら、まずここから始めるのも現実的です。
どれを選ぶにしても、共通して効くのは1つです。出店した日のうちに、売上と経費をメモしておくこと。これができていれば、方法は後からいくらでも変えられます。
迷ったときの相談先
税務署
無料で相談できます。確定申告の時期は混みますが、それ以外の時期なら比較的話を聞いてもらいやすいです。「イベント出店をしている」と具体的に伝えると、話が早くなります。
青色申告会・商工会議所
地域によっては、記帳指導を受けられます。
税理士
売上が増えてきたら、費用をかけても任せる価値が出てきます。判断の目安は「申告作業にかかる時間 × 自分の時給」が税理士報酬を超えたときです。
まとめ
- 判断の基準は売上ではなく所得(売上 − 経費)
- 会社員の副業なら、所得20万円超で所得税の申告が必要になるのが一般的。20万円以下でも住民税の申告は必要
- 継続して出店するなら、開業届と青色申告承認申請書。青色申告の申請は期限が厳しい
- 青色申告特別控除は2027年分から変わる予定。これから始めるならe-Tax前提で
- 出店料・材料費・容器・ガソリン代・決済手数料などは経費になるのが一般的。レシートは出店した日ごとに分けておく
- 屋台・マルシェ出店の多くは、インボイス登録は必要ありません
- ただし2割特例は個人事業者の場合、2026年分が最後
出店にいくらかかるかは、業態別の費用の記事にまとめてあります。
